世の中に音楽をテーマにした小説はたくさんありますが、バイオリンがテーマの小説って割と少ない印象です。
今回は、バイオリン好きの私が愛読している、バイオリンがテーマの小説をご紹介します!
おやすみラフマニノフ(中山七里)

【あらすじ】
音楽大学を舞台にしたミステリー。
主人公・晶が通う音大の完全密室からストラディバリウスのチェロが消えるという事件を皮切りに、次々と不可解な事件が起こります。
【おすすめポイント】
中山七里さんといえば、臨場感あふれる音楽描写! もはや実況中継です。
聴きながら読むのも楽しいです。
楽器や曲、音大に関する知識も豊富に盛り込まれています。
ミステリーといっても、連続殺人事件とか血生臭い話ではないので、そっち系のミステリーが苦手な方もご安心ください。
なお、この『おやすみラフマニノフ』は、天才ピアニスト岬洋介シリーズ第2弾。第1弾の『さよならドビュッシー』は「このミステリーがすごい!」大賞作品です。第1弾を読まずに第2弾を読んでも大丈夫です。
【主な登場曲】
- パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第2番 第3楽章
- パガニーニ 24のカプリース 第24番
- チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
- ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
【こんな人におすすめ】
- ミステリー好き
- 大どんでん返し好き
- 文章から音楽が聴こえてくるような作品が読みたい
あやしバイオリン工房へようこそ(奥乃桜子)

【あらすじ】
仙台のバイオリン工房を舞台にしたあやかし事件簿。
楽器販売店をクビになった主人公・惠理は、仙台でバイオリン職人とストラディヴァリウスの精に出会います。彼らとともに、バイオリンにまつわる不思議な事件を解決していきながら、自分の生き方を見直し成長していきます。
【おすすめポイント】
集英社オレンジ文庫・2017年ノベル大賞佳作受賞作品。
当初、『バイオリンの精』ときいて、ファンタジー苦手な私はちょっと身構えてしまったのですが、人間でない存在であることは重要でした。人間相手だったら描けない、感動的なストーリーになっているのです。
人間(バイオリンの精含め)に対する誠実で温かな描写が、読んでいて心地いいです。
ご自身もバイオリンを弾いていた経験がある奥乃先生の、バイオリン愛が伝わってくる作品です。
主人公のバイオリンに対する屈折した感情や、逃げ癖に対する自己嫌悪がひしひしと伝わってきて苦しいほどですが、乗り越えた読後感がとっても爽やか!
【主な登場曲】
- バッハ G線上のアリア
【こんな人におすすめ】
- 真面目で頑張り屋の女の子が主人公の小説に元気をもらいたい
- ツンデレの人外青年が出てくるライトノベルが読みたい
- 恋愛に発展しそうでしないライトノベルが読みたい
- 仙台が好き
アヴェ・マリアのヴァイオリン(香川宜子)

【あらすじ】
アウシュビッツ強制収容所でヴァイオリンを弾いて生き抜いたユダヤ人少女の話。史実をもとにした小説です。
話は、現代日本の徳島県から始まります。
ヴァイオリンの道か医者か、進路に悩む14歳のあすか。そんななか、音色に惚れ込んで購入してもらったヴァイオリンは、アウシュビッツを生き抜いたユダヤ少女が使っていた楽器であると楽器商から教えられます。その少女と一緒にアウシュビッツを生き抜いたチェロ奏者の老人が来日し、あすかは老人から少女の話をきかせてもらいます。
【おすすめポイント】
第60回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書ですので、子どもでも読みやすい文体で書かれています。
しかし。
あらすじから想像できると思いますが、重いです。
アウシュビッツに音楽隊があったことを、この本で知りました。
エピソードとして、徳島の板東収容所でのドイツ人俘虜と日本人との交流についても描かれていて、心が救われました。
作者の香川宜子さんは内科医勤務をしながら執筆されたということで、いい意味でプロっぽくなく、メッセージ性がストレートに伝わってくる作品になっています。
【主な登場曲】
- シューベルト アヴェ・マリア
- ヨハン・シュトラウス1世 ラデツキー行進曲
【こんな人におすすめ】
- 歴史が好き
- 第二次世界大戦下のドイツについて知りたい
- 音楽と人間性について考えたい
ドラフィル!竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄(美奈川護)

【あらすじ】
地方のアマチュアオーケストラが舞台。
音大を出たものの仕事がないヴァイオリニストの青年・響介は、郊外のアマチュアオーケストラのコンサートマスター(オーケストラのリーダー)となります。
個性豊かな団員を仕切るのは、車椅子に乗った若い女性指揮者・七緒。
響介は七緒とともに、団員にまつわる事件や問題に対応していきます。
【おすすめポイント】
団員それぞれにまつわるオムニバス形式のライトノベル王道の小説かと思いきや、ヴァイオリンの謎や七緒の秘密もからみ、結構複雑なストーリー展開です。
七緒の台詞に名言が多い! 何度も読み返して味わうこと、たびたび。
音楽と違って、小説は自分のペースで繰り返して読めるところがいいですよね。
シリーズは全3巻。
ドラフィル!2 竜ケ坂商店街オーケストラの革命
ドラフィル!3 竜ヶ坂商店街オーケストラの凱旋
【主な登場曲】
- ブラームス ヴァイオリン協奏曲
- ワーグナー 歌劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》より第一幕への前奏曲
【こんな人におすすめ】
- 気軽に読んでも楽しい、深読みするともっと楽しい、ライトノベル好き
- それぞれの登場人物と音楽が絡み合うオムニバス形式の小説が好き
愛よいま、風にかえれ(藤本ひとみ)

【あらすじ】
主人公マリナの親友・響谷薫が、死刑囚である兄からの強い希望を受け、高名なバイオリニストの弟子入り選抜試験に挑戦。しかし、その中で次々と事件が起きていきます。
【おすすめポイント】
男勝りの響谷薫のヴァイオリンに対する姿勢がかっこよく、演奏する姿は色っぽい!!
音楽にまつわるシーンはそれほど多くないのですが、楽器や音楽の豆知識は豊富。主人公の一人称で書かれているので、スッと頭に入っています。
音楽シーンのイチオシは、同じ楽譜が解釈により全く違った曲になる、というクライマックスシーン。とっても鮮やかに描かれています。
私が中学時代に出会い、ヴァイオリンに憧れるきっかけとなった作品です。
【主な登場曲】
- グノー アヴェ・マリア
【こんな人におすすめ】
- コバルト文庫に懐かしさを感じる
- ロマンチックな女性向け小説を読みたい
- 男装の麗人が色っぽくヴァイオリンを弾く姿を堪能したい
以上、5作品、いかがでしたか?
小説として楽しめる作品たちですが、これをきっかけに曲を聴いてみるのも楽しいと思います!
最後までお読みくださりありがとうございました。
参考になりましたらうれしいです。